東京国際フォーラムA
ママ、驚かないで。私フォーラムの2階にいるの。でも心配しないで。宇都宮でハシャギ過ぎたから隔離されたワケじゃないのよ。2階席から見るとフォーラムもステージもとても美しいのよ。それだけでドラマチックなの。
フォーラムだと様々な方々が集まる。ファン同士の再会や旧交を温める、まるで親戚の多い法事…ちゃう社交場のようになっている。もちろん著名人もたくさん来る。そういう意味では他の会場にはない"よそゆき感"がある。明治でいえば鹿鳴館みたいなものだ。行った事ねぇだろ。そのよそゆき感ゆえに面白くもあり、またそれがゆえに物足りなさにもつながる。
北海道からいらした知り合いのお母様。私などの遥か大先輩である。大先輩の「拓郎さんと同じ部屋で息をできるだけで幸せ」と言う言葉に胸を打たれる。どんな思いで観られるのだろうか、何を感じられるのだろうか。「マークⅡ」がお好きと聴いて、ああ歌ってくれねぇかなと思った。
それにフォーラムはロビーでスパークリングワインを飲むのが慣行だ。だからって3杯も飲んでんじゃねーよ。さまざまな思いで、"星を求めて開演"を待つ身のつらさがわかりすぎ。また拙いシャツ(もちろん謙遜だ)を着てくれた方々に心の底からお礼申し上げます。
そして定刻になると一人でギターを抱えてステージに現れる。黒のシャツに縞のパンツ。
例によっておもむろに歌いだす。
♪私には私の生き方がある~ この第一声がその夜のリトマス試験紙みたいなものだ。おお鮮やかな紫に変わった。今日もボーカルは絶好調だぜ。
こんばんはTOKYO。Long time no see。今宵元気で逢えて良かった。 メンバー紹介で呼び入れ
村石、松原、村田、渡辺、加藤、吉岡、今井、土井、鳥山、武部の順
そして一曲目。「えっ、この曲を歌うのかっ!」。こうなったら何度でも驚いてやるぞ、このオープニング。それくらい私には貴重なのだ。
♪1.私の足音 「・・・忘れじの物語、明日への足音が聞こえてくるんだ 一歩ずつ確かめてまだ見ぬ旅へ」という現在の歌詞が少しずつ聴き取れて来る。この「私の足音」が晴れて公式の音源と映像となり、これからずっと一緒にいてくれるのだ。
いいねぇ、シャウトもバッチリだ。
♪2.人間のい 美しい形状のフォーラムに美しいステージがハマリこみその中で美しい拓郎がギターを弾き歌う。美しい額縁に入った一幅の絵画のようでもある。
お耳なじみのない曲をよりすぐってお送りしています(笑)。“今日までそして明日から”はオマケです。テレビでは若い20代、スポーツでは10代が活躍。紀平さんのサインを貰った。武部が羽生君の仕事をしていた関係でサインを頼んだ。吉田拓郎様と書いてあったが本人は知らなかった(笑)。お母さんは知ってますと(笑)。髪型をすだれ髪で顔を隠す米ちゃんみたいにしたいと言ったら、量が足りないと言われた。これはどうにもならない。
とにかくこの年齢までやってこれた。人生のイントロ→Aメロ→Bメロ→間奏→アウトロ・エンディングに差し掛かっている。
♪3. 早送りのビデオ よく声が出でおり、もうたまらなく歌がうまい。ブルーの照明がステージ全体を包み込む。切々としたボーカルを包み込むかのようだ。いいステージだ。壊れ物を愛でるようにドラムを刻む村石雅行の姿が胸を打つ。そしてやっぱり哀川翔に似ている。
♪4.やせっぽちのブルース すまん今日も立とうと思ったが立てなかった。ヘタレ。美しく客席で踊ってやろうと思っていたのだが。
若い頃の人生は♪風に吹かれてのとおり、ずっと風に憧れて、やたら詞に風が出てくる。 コンサートも札幌とか大坂とか終演後そのまま飲み屋に直行していたが最近は酒が弱くなった。最近は、酒より食べ物、甘いものに目が無い。おふくろのお茶菓子の関係でトラウマになって昔は甘いものが嫌いだった。ティラミス・・・古いけど。来週、小田和正と会う。70歳超えた二人で昼間に会う。ティラミスとチーズケーキとシュークリームを指定しておいた。何を話すのか。♪僕は少し変わったでしょう。
♪5.ともだち 村田のアコーディオンがしゃくりあげるようで胸に刺さる。村田、渡辺の最高のプレイ。またここでも村石の職人姿に見ほれる。
直前最後曲間のコーラスがあらためていらない。拓郎のボーカルですべてが表現し尽くされている。それがまたいちだんと円熟している。なんという機微のあるボーカルなんだよ。
♪6.あなたを送る日 CDだと唐突な最後の転調のところがライブだと何かが盛り上がって、まるで空にのぼってゆくようなタカマリを感じる。イイ。今は心にしみる。心に痛い。とてもイイ。 ♪7.I'm In Love 紫のライトがステージを包む。このとろける海のような歌を聴きながらしみじみと感じ入る。何度でも言うが、かつて若い頃は、なんと軟弱な、なんと自堕落な、世界が滅びても構わないとはなんて鬼畜な歌だと失望したあの歌である。歳月を得て、いま若い生硬さを恥じながら涙ぐんで聴く。歳月も拓郎もそんな私に復讐も仕返しもせず、ひたすら美しい音色を聴かせてくれる。ま、別に私なんてどうでもいいのだ。この歌はきっと吉田拓郎の「きみに読む物語」なのだろうなと思った。もちろん思い込みだ。しかしそんなに的外れでもあるまい。吉田拓郎と森下愛子が主役なら、私はせいぜい村人のエキストラだ。いみふ。 そんなこと言っても詮無いし、失礼な言い草だが、ああ青山徹に弾かせてやりたい…やりたいとは失礼か、弾いていただきたいと心の底から思った。
♪8.流星 なんてよく声が出ているのだろう。磐石だ。♪流れる星は~の絶唱がフォーラムの天井をつきぬけそうである。だから屋根の梁を高くしなくてはならないのだ。アマハタは号泣しておられた。
何度見ても、間奏のハーモニカが圧巻である。圧巻ながらそのハーモニカをすぐに投げ捨てるところもメチャカッコイイのだ。どんなに美しくとも吹き終わったハーモニカは拓郎にとって既に過去なのだ。
「春だったね」とか予定どおりにいかない曲。気分がイイ。どきどきする。ラジオの2年間はいろんなことを知った。その中で、いろんな曲に気づかせてくれた。リハーサルで演奏してみたらボコボコになった曲もあったが、これはうまく出来た曲。その次の曲は、うまく歌えないので期待しないで。もし気に入ったら踊るなり何なりして。
♪9.そうしなさい 熱唱。うまいなぁ。魂である。コーラスの歌詞アシストは要らないのではないか。静かにウーだけでいいのではないか。それくらい拓郎のボーカルの説得力が抜き身ですんばらしいぞ。
♪10.恋の歌 勇気を出して今日もスタンディングした。少数派だった。カタルシスのカタマリのような気持いいメロディーなのに、踊りやすいレゲエアレンジなのに、なぜ不人気なのだ。所ジョージの曲だからか。
行きつけのいろんな病院の方々が客席にいらしている。医者の前で歌うのはどうも。もともとそんなに身体が強くはなかった。高齢出産で危険を覚悟で生んだと言う話を恩着せがましくしていた母。確かに身体は弱かったので「朝までやるぞ」が自分であるとは誰も信じてくれなかった。目がマッチ棒と言ったけれど身体がマッチ棒のような男です。
♪11.アゲイン 生硬な印象だったアゲインが、今回のツアーでは、こなれてきて心地よくなっている。自家薬籠中のような感じだ。セットリストの中でサラリと歌われている印象が強い。 ♪12.慕情 すんばらしい歌、すんばらしい歌唱で何一つ文句はない。しかし石山恵三の方が泣ける。なぜだ。そういうキマリはないのだが「あなた」=「吉田拓郎」である。これは絶対に。まさか松山千春を思い浮かべて聴く人はおるまい。「あなた」が「吉田拓郎以外」であることはあり得ない。吉田拓郎本人歌唱は、あなたがあなたのことをあなたと歌っているから何か感情移入が難しいのではないかと思う。あなたを慕う第三者が、あなたのことをあなたと歌っていれば、そこには共感が芽生えやすい。そこにこの名曲のむずかしさがありましょう。ああ、そういいながらも、間奏で2階席を見つめてくれている、あなたが好き。思い切り手を振る。
♪13.新曲 永遠のツイスト。かっこいい。このツイストにスタンディングする。詞の内容が良く聞き取れないがゴキゲンでゆく。go! go! go! 気おくれしながら立っているヘタレの自分とは違い、最前列近くの知り合いのおねーさんは迷い無く自由に楽しくノっておられる。その軽やかな気骨にはいつも頭が下がる。
落陽はいつもギターを弾かせといて花火見たりヒマにしていられる。なので今回のような選曲はツライよ。いつも北は大宮、南は横浜だったが、今回は北は宇都宮、南は名古屋。宇都宮は2時間車で寂しくなったが、会場も客席も素晴らしかった。名古屋は天むすとひつまぶしで決めた。でも名古屋ではそんなことは言わないよ。「会いたかったぜ」という。しかしこの歳になってコンサートはどうなんだろう。小田に聞いてみたい。
大阪はリハまでやってキャンセルだった。帰りの高速で元気になって、おなかが空いてきたけど、キャンセルした身なので外に出るなと怒られた。大阪には借りがある。しかし新幹線はツライ。 ♪14.純 迷わずスタンドするがまたもやひとり。「前略 テレビの前の視聴者の皆さん、この曲で立つヤツは不良です。だから決してマネしないでください」…そういうクロマティ高校の神山のテロップでも流れているのか。どけどけどけこの曲が嫌いなヤツはどけとちょっと荒んだ。
宇都宮で孤独なスタンディングをしたところ「あれじゃ拓郎がかわいそう」とまで文句を言われ哀しかったが、最後のライブである。いまさらスタンディングの是非を議論してる時間などはない。拓郎の「好きにすれば」に従うまでだ。
それに立ったから偉い、愛が深いというものでもない。座っていようと万感の愛に溢れている方もいる。座るも立つも愛はどちらにもある。ただ吉田拓郎との“音楽での会話”にあたって、私にはスタンディングしか方法がみつからないのだ。なんて言いながら、独りで立ったときのどうしようもない孤独感、引き返せない立ち尽くし感といったらない。
アウトロから続いて、メンバー紹介。
村石雅行
松原秀樹
渡辺格
村田昭
鳥山雄司
武部聡志
加藤いづみ
吉岡悠歩
今井マサキ
土井康宏
紹介が終わったら王様たちのハイキング~遊びに行きませんか僕らと一緒に~のみを歌う。
♪15.ガンバラないけどいいでしょう 宇都宮ではアジアの片隅でみたいにサビを唱和したが今回はヘタレてしまった。他人ことはともかく自分が情けない。
へぇーって感じ。ちょっとびっくり。もうすぐ終わるからね。これからも音楽はやめません(拍手)ミュージシャンたちの友情にこたえて曲を作り続けたい。今度は北は仙台から(拍手)・・・わからないけれど、あまのじゃくのまま行こうと思います。
どこか心外な部分があったのか。音楽での対話は、交差交流になってしまった気がする。他の会場と安易に比べるべきではないが、宇都宮の怒涛な感じとはまた違ってすべてがクールだった。自分の周囲は、腕組みして聴いている評論家然とした人が多かった。それが悪いわけではない。
ただ歴戦のTYISの会員たち=拓バカたちを大挙して当選させて、客席前方に配置すれば良かったのではないか。これでもかとうねるような音楽の対話が実現したんではないかと思う。あの人もこの人もアイツもコイツもみんなチケットがないかあるいは後席に甘んじていた。このハートのある選曲を心から讃え、拓郎と音楽の対話が死ぬほどしたい人々にもっと光をくれよ。フォーラムのよそゆき感が思い切り裏目に出てしまったのではないか。 ♪16.この指とまれ 「オイラとにかく大ッ嫌いだねぇ」この艶のある絶品シャウトを聴くために、ひとえにそのためだけにココに来るのが楽しみだったという人もいる。白眉である。確かに、ハンド・イン・ハンドもシアターフレンズもどうでもいい。この歌の大きさは、そんなものをはるかに超え、山よりも高く海よりもまだ深いスケールに至っている。自分の言ったこと忘れて、ネットは嘘ばかりと他人のせいにしたのは釈然としないが(爆)この歌がこうして今もチカラをもって生き続け、私たちをワクワクさせるところにこそ大切な意味があるのだと思うことにした。
でも人差し指をコーラス隊が回しているのが気に入らないのは変わらず。
♪17.俺を許してくれ どうしてもこの日は熱度が拡散してしまっている気がしてならなかった。しかし吉田拓郎はひたすらであった。ボーカルも前回よりより一層美しくなって進化している。
どうせシロウトのサイトだから勝手に言ってしまうが、2012年から始まったこの編成。こんなハイソでエリートチックな優等生ミュージシャンたちを、よくぞココまでの吉田拓郎色に染め上げたバンドに進化させたものだ。実に勝手な感慨に耽っていた。おい。去り際にレベランスをちょこっとして去ってゆくのがプリティ。
♪アンコール 18.人生を語らず 全力歌唱。ようやくヒートしたのか会場。野生の呼び声、野生の感覚が戻ってきたのか、腕組みをしていた方々も立ち上がっておられる。はっ・・・座り疲れか。 ♪19.今夜も君をこの胸に 鳥山、渡辺、拓郎。ラジオでの予告どおり、トリプルのギターソロになっている。
♪今夜も君をこの胸に~のリフレインに身体を揺らしながら漂う。いいねぇ。
深い深い深いお辞儀。投げキッスもしてくれた。時折、客席を指差す。いいなぁ、おいらも指しておくれ。
ひとつ言いたい。フォーラムの帰りの階段はなぜあんなに長いのだ。2階席から降りたらさらに長かったぞ。しかも殺風景な非常階段。タワーリングインフェルノを思い出す。なにがどうしてどうなったのかわからないが、東京を外すならどうぞ外してくれ。続けてくれるならば、どこへでも行く。走り続けることだけが生きることだと迷わずに答えて・・・浜省じゃねぇか。
私たちが観ているのは、株主総会でも国会の審議でもない、コンサートだ。しかもコンサートツアーの始祖のコンサートだ。道なき道をゆくアーティストのファンも前例のない道をゆくしかない。うろたえながらも冒険はさらにつづく。心のままに前のめりでまいりましょう。愛してるぞ、拓郎。
フォーラムだと様々な方々が集まる。ファン同士の再会や旧交を温める、まるで親戚の多い法事…ちゃう社交場のようになっている。もちろん著名人もたくさん来る。そういう意味では他の会場にはない"よそゆき感"がある。明治でいえば鹿鳴館みたいなものだ。行った事ねぇだろ。そのよそゆき感ゆえに面白くもあり、またそれがゆえに物足りなさにもつながる。
北海道からいらした知り合いのお母様。私などの遥か大先輩である。大先輩の「拓郎さんと同じ部屋で息をできるだけで幸せ」と言う言葉に胸を打たれる。どんな思いで観られるのだろうか、何を感じられるのだろうか。「マークⅡ」がお好きと聴いて、ああ歌ってくれねぇかなと思った。
それにフォーラムはロビーでスパークリングワインを飲むのが慣行だ。だからって3杯も飲んでんじゃねーよ。さまざまな思いで、"星を求めて開演"を待つ身のつらさがわかりすぎ。また拙いシャツ(もちろん謙遜だ)を着てくれた方々に心の底からお礼申し上げます。
そして定刻になると一人でギターを抱えてステージに現れる。黒のシャツに縞のパンツ。
例によっておもむろに歌いだす。
♪私には私の生き方がある~ この第一声がその夜のリトマス試験紙みたいなものだ。おお鮮やかな紫に変わった。今日もボーカルは絶好調だぜ。
こんばんはTOKYO。Long time no see。今宵元気で逢えて良かった。 メンバー紹介で呼び入れ
村石、松原、村田、渡辺、加藤、吉岡、今井、土井、鳥山、武部の順
そして一曲目。「えっ、この曲を歌うのかっ!」。こうなったら何度でも驚いてやるぞ、このオープニング。それくらい私には貴重なのだ。
♪1.私の足音 「・・・忘れじの物語、明日への足音が聞こえてくるんだ 一歩ずつ確かめてまだ見ぬ旅へ」という現在の歌詞が少しずつ聴き取れて来る。この「私の足音」が晴れて公式の音源と映像となり、これからずっと一緒にいてくれるのだ。
いいねぇ、シャウトもバッチリだ。
♪2.人間のい 美しい形状のフォーラムに美しいステージがハマリこみその中で美しい拓郎がギターを弾き歌う。美しい額縁に入った一幅の絵画のようでもある。
お耳なじみのない曲をよりすぐってお送りしています(笑)。“今日までそして明日から”はオマケです。テレビでは若い20代、スポーツでは10代が活躍。紀平さんのサインを貰った。武部が羽生君の仕事をしていた関係でサインを頼んだ。吉田拓郎様と書いてあったが本人は知らなかった(笑)。お母さんは知ってますと(笑)。髪型をすだれ髪で顔を隠す米ちゃんみたいにしたいと言ったら、量が足りないと言われた。これはどうにもならない。
とにかくこの年齢までやってこれた。人生のイントロ→Aメロ→Bメロ→間奏→アウトロ・エンディングに差し掛かっている。
♪3. 早送りのビデオ よく声が出でおり、もうたまらなく歌がうまい。ブルーの照明がステージ全体を包み込む。切々としたボーカルを包み込むかのようだ。いいステージだ。壊れ物を愛でるようにドラムを刻む村石雅行の姿が胸を打つ。そしてやっぱり哀川翔に似ている。
♪4.やせっぽちのブルース すまん今日も立とうと思ったが立てなかった。ヘタレ。美しく客席で踊ってやろうと思っていたのだが。
若い頃の人生は♪風に吹かれてのとおり、ずっと風に憧れて、やたら詞に風が出てくる。 コンサートも札幌とか大坂とか終演後そのまま飲み屋に直行していたが最近は酒が弱くなった。最近は、酒より食べ物、甘いものに目が無い。おふくろのお茶菓子の関係でトラウマになって昔は甘いものが嫌いだった。ティラミス・・・古いけど。来週、小田和正と会う。70歳超えた二人で昼間に会う。ティラミスとチーズケーキとシュークリームを指定しておいた。何を話すのか。♪僕は少し変わったでしょう。
♪5.ともだち 村田のアコーディオンがしゃくりあげるようで胸に刺さる。村田、渡辺の最高のプレイ。またここでも村石の職人姿に見ほれる。
直前最後曲間のコーラスがあらためていらない。拓郎のボーカルですべてが表現し尽くされている。それがまたいちだんと円熟している。なんという機微のあるボーカルなんだよ。
♪6.あなたを送る日 CDだと唐突な最後の転調のところがライブだと何かが盛り上がって、まるで空にのぼってゆくようなタカマリを感じる。イイ。今は心にしみる。心に痛い。とてもイイ。 ♪7.I'm In Love 紫のライトがステージを包む。このとろける海のような歌を聴きながらしみじみと感じ入る。何度でも言うが、かつて若い頃は、なんと軟弱な、なんと自堕落な、世界が滅びても構わないとはなんて鬼畜な歌だと失望したあの歌である。歳月を得て、いま若い生硬さを恥じながら涙ぐんで聴く。歳月も拓郎もそんな私に復讐も仕返しもせず、ひたすら美しい音色を聴かせてくれる。ま、別に私なんてどうでもいいのだ。この歌はきっと吉田拓郎の「きみに読む物語」なのだろうなと思った。もちろん思い込みだ。しかしそんなに的外れでもあるまい。吉田拓郎と森下愛子が主役なら、私はせいぜい村人のエキストラだ。いみふ。 そんなこと言っても詮無いし、失礼な言い草だが、ああ青山徹に弾かせてやりたい…やりたいとは失礼か、弾いていただきたいと心の底から思った。
♪8.流星 なんてよく声が出ているのだろう。磐石だ。♪流れる星は~の絶唱がフォーラムの天井をつきぬけそうである。だから屋根の梁を高くしなくてはならないのだ。アマハタは号泣しておられた。
何度見ても、間奏のハーモニカが圧巻である。圧巻ながらそのハーモニカをすぐに投げ捨てるところもメチャカッコイイのだ。どんなに美しくとも吹き終わったハーモニカは拓郎にとって既に過去なのだ。
「春だったね」とか予定どおりにいかない曲。気分がイイ。どきどきする。ラジオの2年間はいろんなことを知った。その中で、いろんな曲に気づかせてくれた。リハーサルで演奏してみたらボコボコになった曲もあったが、これはうまく出来た曲。その次の曲は、うまく歌えないので期待しないで。もし気に入ったら踊るなり何なりして。
♪9.そうしなさい 熱唱。うまいなぁ。魂である。コーラスの歌詞アシストは要らないのではないか。静かにウーだけでいいのではないか。それくらい拓郎のボーカルの説得力が抜き身ですんばらしいぞ。
♪10.恋の歌 勇気を出して今日もスタンディングした。少数派だった。カタルシスのカタマリのような気持いいメロディーなのに、踊りやすいレゲエアレンジなのに、なぜ不人気なのだ。所ジョージの曲だからか。
行きつけのいろんな病院の方々が客席にいらしている。医者の前で歌うのはどうも。もともとそんなに身体が強くはなかった。高齢出産で危険を覚悟で生んだと言う話を恩着せがましくしていた母。確かに身体は弱かったので「朝までやるぞ」が自分であるとは誰も信じてくれなかった。目がマッチ棒と言ったけれど身体がマッチ棒のような男です。
♪11.アゲイン 生硬な印象だったアゲインが、今回のツアーでは、こなれてきて心地よくなっている。自家薬籠中のような感じだ。セットリストの中でサラリと歌われている印象が強い。 ♪12.慕情 すんばらしい歌、すんばらしい歌唱で何一つ文句はない。しかし石山恵三の方が泣ける。なぜだ。そういうキマリはないのだが「あなた」=「吉田拓郎」である。これは絶対に。まさか松山千春を思い浮かべて聴く人はおるまい。「あなた」が「吉田拓郎以外」であることはあり得ない。吉田拓郎本人歌唱は、あなたがあなたのことをあなたと歌っているから何か感情移入が難しいのではないかと思う。あなたを慕う第三者が、あなたのことをあなたと歌っていれば、そこには共感が芽生えやすい。そこにこの名曲のむずかしさがありましょう。ああ、そういいながらも、間奏で2階席を見つめてくれている、あなたが好き。思い切り手を振る。
♪13.新曲 永遠のツイスト。かっこいい。このツイストにスタンディングする。詞の内容が良く聞き取れないがゴキゲンでゆく。go! go! go! 気おくれしながら立っているヘタレの自分とは違い、最前列近くの知り合いのおねーさんは迷い無く自由に楽しくノっておられる。その軽やかな気骨にはいつも頭が下がる。
落陽はいつもギターを弾かせといて花火見たりヒマにしていられる。なので今回のような選曲はツライよ。いつも北は大宮、南は横浜だったが、今回は北は宇都宮、南は名古屋。宇都宮は2時間車で寂しくなったが、会場も客席も素晴らしかった。名古屋は天むすとひつまぶしで決めた。でも名古屋ではそんなことは言わないよ。「会いたかったぜ」という。しかしこの歳になってコンサートはどうなんだろう。小田に聞いてみたい。
大阪はリハまでやってキャンセルだった。帰りの高速で元気になって、おなかが空いてきたけど、キャンセルした身なので外に出るなと怒られた。大阪には借りがある。しかし新幹線はツライ。 ♪14.純 迷わずスタンドするがまたもやひとり。「前略 テレビの前の視聴者の皆さん、この曲で立つヤツは不良です。だから決してマネしないでください」…そういうクロマティ高校の神山のテロップでも流れているのか。どけどけどけこの曲が嫌いなヤツはどけとちょっと荒んだ。
宇都宮で孤独なスタンディングをしたところ「あれじゃ拓郎がかわいそう」とまで文句を言われ哀しかったが、最後のライブである。いまさらスタンディングの是非を議論してる時間などはない。拓郎の「好きにすれば」に従うまでだ。
それに立ったから偉い、愛が深いというものでもない。座っていようと万感の愛に溢れている方もいる。座るも立つも愛はどちらにもある。ただ吉田拓郎との“音楽での会話”にあたって、私にはスタンディングしか方法がみつからないのだ。なんて言いながら、独りで立ったときのどうしようもない孤独感、引き返せない立ち尽くし感といったらない。
アウトロから続いて、メンバー紹介。
村石雅行
松原秀樹
渡辺格
村田昭
鳥山雄司
武部聡志
加藤いづみ
吉岡悠歩
今井マサキ
土井康宏
紹介が終わったら王様たちのハイキング~遊びに行きませんか僕らと一緒に~のみを歌う。
♪15.ガンバラないけどいいでしょう 宇都宮ではアジアの片隅でみたいにサビを唱和したが今回はヘタレてしまった。他人ことはともかく自分が情けない。
へぇーって感じ。ちょっとびっくり。もうすぐ終わるからね。これからも音楽はやめません(拍手)ミュージシャンたちの友情にこたえて曲を作り続けたい。今度は北は仙台から(拍手)・・・わからないけれど、あまのじゃくのまま行こうと思います。
どこか心外な部分があったのか。音楽での対話は、交差交流になってしまった気がする。他の会場と安易に比べるべきではないが、宇都宮の怒涛な感じとはまた違ってすべてがクールだった。自分の周囲は、腕組みして聴いている評論家然とした人が多かった。それが悪いわけではない。
ただ歴戦のTYISの会員たち=拓バカたちを大挙して当選させて、客席前方に配置すれば良かったのではないか。これでもかとうねるような音楽の対話が実現したんではないかと思う。あの人もこの人もアイツもコイツもみんなチケットがないかあるいは後席に甘んじていた。このハートのある選曲を心から讃え、拓郎と音楽の対話が死ぬほどしたい人々にもっと光をくれよ。フォーラムのよそゆき感が思い切り裏目に出てしまったのではないか。 ♪16.この指とまれ 「オイラとにかく大ッ嫌いだねぇ」この艶のある絶品シャウトを聴くために、ひとえにそのためだけにココに来るのが楽しみだったという人もいる。白眉である。確かに、ハンド・イン・ハンドもシアターフレンズもどうでもいい。この歌の大きさは、そんなものをはるかに超え、山よりも高く海よりもまだ深いスケールに至っている。自分の言ったこと忘れて、ネットは嘘ばかりと他人のせいにしたのは釈然としないが(爆)この歌がこうして今もチカラをもって生き続け、私たちをワクワクさせるところにこそ大切な意味があるのだと思うことにした。
でも人差し指をコーラス隊が回しているのが気に入らないのは変わらず。
♪17.俺を許してくれ どうしてもこの日は熱度が拡散してしまっている気がしてならなかった。しかし吉田拓郎はひたすらであった。ボーカルも前回よりより一層美しくなって進化している。
どうせシロウトのサイトだから勝手に言ってしまうが、2012年から始まったこの編成。こんなハイソでエリートチックな優等生ミュージシャンたちを、よくぞココまでの吉田拓郎色に染め上げたバンドに進化させたものだ。実に勝手な感慨に耽っていた。おい。去り際にレベランスをちょこっとして去ってゆくのがプリティ。
♪アンコール 18.人生を語らず 全力歌唱。ようやくヒートしたのか会場。野生の呼び声、野生の感覚が戻ってきたのか、腕組みをしていた方々も立ち上がっておられる。はっ・・・座り疲れか。 ♪19.今夜も君をこの胸に 鳥山、渡辺、拓郎。ラジオでの予告どおり、トリプルのギターソロになっている。
♪今夜も君をこの胸に~のリフレインに身体を揺らしながら漂う。いいねぇ。
深い深い深いお辞儀。投げキッスもしてくれた。時折、客席を指差す。いいなぁ、おいらも指しておくれ。
ひとつ言いたい。フォーラムの帰りの階段はなぜあんなに長いのだ。2階席から降りたらさらに長かったぞ。しかも殺風景な非常階段。タワーリングインフェルノを思い出す。なにがどうしてどうなったのかわからないが、東京を外すならどうぞ外してくれ。続けてくれるならば、どこへでも行く。走り続けることだけが生きることだと迷わずに答えて・・・浜省じゃねぇか。
私たちが観ているのは、株主総会でも国会の審議でもない、コンサートだ。しかもコンサートツアーの始祖のコンサートだ。道なき道をゆくアーティストのファンも前例のない道をゆくしかない。うろたえながらも冒険はさらにつづく。心のままに前のめりでまいりましょう。愛してるぞ、拓郎。