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やさしい悪魔

1977年
作詞 喜多條忠 作曲 吉田拓郎
アルバム「ぷらいべえと」

悪魔が来たりて曲をかく

 いわずと知れたトップアイドルのキャンディーズへの提供曲で大ヒットしたことは説明の必要はあるまい。後に「解散」が宣言され、解散のカウントダウンの「ご祝儀相場」でラストのシングルはかなり売上を伸ばしたが、それまで「やさしい悪魔」は、キャンディーズの過去のシングル売上で最高枚数を記録していた。「春一番」「年下の男の子」よりもはるかに売れたのである・・って説明してるじゃん。吉田拓郎の作曲家としての威力をあらためて広く一般人に知らしめた。・・少なくとも私の中学のクラスではそうだった(爆)。
 お色気上等の「ピンクレディー」がデビューとともに猛追を始め、キャンディーズとしても戦略的に「大人化計画」が必要ということで、ナベプロから直々に喜多條忠と御大が抜擢されたのであった。アイドル好き、わけてもキャンディーズが大好きだった御大がこの仕事をガンバラナイはずがない。
 渾身の本曲は、大人のムーディな雰囲気を漂わせながらも、幕の内弁当のようなテンコモリのメロディー展開が詰め込まれている。特に「やがてひとつのwohwohwoh・・」という御大ならではのキャッチーでポップなフレーズも入れこまれた見事な作品に仕上げられた。キャンディーズファンの自民党・石破茂も一番完成度が高い作品であると評した。憲法観は異なるが、この意見は認めざるを得ない。なんだそりゃ。
 歌う方には難曲になってしまい、特に蘭ちゃんはある事情で体調がよくなく音程が不安定なところを、御大はサインはVの中山仁のような鬼コーチぶりで(私の推測)で歌唱指導したため、ついに泣きだしてしまったとキャンディーズのファンクラブの会報に書いてあった。当時スーちゃんが「んーんーんーやらしい悪魔」とネタにしていたのはもしかして御大のことだったのだろうか。
 ラジオ番組の音楽夜話で小室等は「難曲にしてキャンディーズとの歌唱指導の時間を増やしたかっただけだ。こんな曲はおまえが歌ってみろ。」と怒っていた。ファンとしては、そんな姑息なことをする御大ではないと・・・断言できないところが辛い。
 曲の最初のカウントは、拓郎の靴でスタジオの床を叩いて録音した。最近(2015年)の御大のつぶやきで「靴音に酔う」という言葉があったが、そんな御大ならではの発想だ。カウントは7回で、ちなみにファンはコレにあわせて「C!A!N!D!I!E!S!」とシャウトしなければならない。よく作りこんであり、さすが御大だ。またコーラスにも参加したとのことだ。確かに、やりたい放題の御大だ。
・・・ついキャンディーズのことなので熱く語りすぎてしまったが、そのほかのことは「uramado提供曲編」で。

 御大はアルバム「ぷらいべえと」で、ほぼ時期を一にして本人歌唱を収録する。原曲とは雰囲気の違うシンプルなギターサウンドで、どうやらミュージシャンはつかずに御大一人で録音したらしい。ずいぶんサッパリとした感じで、バンドで演ったらどうなんだとろうと当時少し思った。そしたらその10年後、頼みもしないのに(笑)、SATEOツアーで、バンドバージョンで演奏してくれて驚いたものだ。やはりバンドサウンドの方が、この作品の練られた組み立てと奥行きが生かされるのではないかと僭越にも思ったものだ。
 しかし、この昨品はやはり魅力ある女性アイドルやシンガーに歌い継いで行ってほしいと願う。特にキャンディーズの復活がかなわないことになった今、日本音楽界の末永きスタンダードになって欲しいと願うばかりだ。

2016.1/30