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裏街のマリア

1978年
作詞 松本 隆 作曲 吉田拓郎
アルバム「ローリング30」/アルバム「AGAIN」/ DVD「TAKURO YOSHIDA LIVE 2014」

不良少女更生支援ソングの最高峰

 この作品は、1978年の二枚組大作「ローリング30」に収録されていて、好きな人には人気がある。当たり前か。不良で荒んでいるけど本当は純真な少女。そんな少女を心配してを手を差しのべる男・・・という、なんだか昔からよくあるコテコテなテーマだ。それに同時期の大野真澄への提供曲「ダンディー」のB面に、ほぼ似たテーマのタイトルも「マリア」と言う作品が、松本隆・拓郎のコンビで収録されていたりする。しかし、そこは松本隆、この作品も含めてドラマ仕立ての料理が実に上手い。

 とはいえ、この作品の真骨頂はメロディとサウンドだろう。拓郎の狙いは「ディスコ」で踊りまくれるような曲ということだった。その命を受けてアレンジャー後藤次利とレコーディングのミュージシャンが動いた。
 ところでアルバム「ローリング30」は二つのミュージシャン・チームによって出来上がっている。メインは、“箱根ロックウェルチーム(石川鷹彦、島村英二、徳武弘文、エルトン永田、石山恵三”、もうひとつは“ほぼティン・パン・アレイ・チーム(松任谷正隆、鈴木茂、林立夫、後藤次利)”。“ほぼ”というのはティン・パン・アレイのベーシスト細野晴臣の代わりに元祖モテ系ミュージシャン後藤次利が入っている点だ。“箱根ロックウェルチーム”のこのアルバムの代表作は「外は白い雪の夜」「言葉」「虹の魚」「ローリング30」。ほぼティンパンチームの代表作は、「英雄」「冷たい雨が降っている」「無題」など。
 このように、この二つのチームの絶妙な競作がこのアルバムを作り上げ、名盤たるを不動のものにしている。そして、拓郎のコンサートツアーメンバーはこの二つのチームから選りすぐられていることもわかる。

  そして後藤次利のアレンジ。このアルバムのみならず拓郎の作品中でも彼がアレンジしているのは、この作品だけだ。後藤次利といえば「新六文銭」。柳田ヒロにチト河内という音楽的センスの高さに加え、拓郎と後藤次利というモテ系男が並んだビジュアル。文字通りスーパーバンドと言われた。にもかかわらず、拓郎いわく「それだけ揃っても結局メインボーカルが小室等じゃどうしようもない」ということで、悲しい結果だったようだ。話がそれた。
 拓郎の注文である「ディスコ」で踊りまくるような曲ということで、後藤次利が張り切って気合入魂のデーハーなアレンジをしている。いきなり最初からミゾオチに一撃食らうような出だしに驚く。”ほぼティンパンチーム”のメンバーに、村岡健、ジェイクコンセブションのブラスが唸り、そりゃもう大変な演奏になっている。細かいフレーズのひとつひとつまでに後藤次利の配慮と気合が入りまくっている気がする。やはり男はマメでないとモテないのだろうか。それは関係ないか。この作品は、ライブでは、篠島で「みんなディスコ好きかい?」と拓郎の問いかけに続いて演奏された。でもたぶんディスコでかかったことはないと思うが。
 2014年にアルバム「AGAIN」でセルフカバーされ、篠島以来、ステージでも久々にダンサブルなロックナンバーとして元気な姿を見せた。ここはスタンディングして踊るところでしょうと思いつつ腰が上がらなかった。いかん。爺になっている自分がいる。

2015.10/17