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トワイライト

1999年
作詞 吉田拓郎 作曲 吉田拓郎
シングル「トワイライト」/アルバム「こんにちわ」

新たなる船出と謎の謝罪

 言わずと知れたインペリアルレコード移籍第一弾シングルとして歴史に残る。インペリアル移籍というよりもフォーライフレコード脱退という事件が私たちを驚かせた。フォーライフはただの所属レコード会社ではなく、日本音楽史に刻印さるべきエポックであり、その創業者にして社長も務めたのが拓郎である。ちょうどパナソニックの創業者松下幸之助が、突然転職してヤマダ電機で「安さ爆発」と叫んでいるようなものだ。違うか。   移籍の背景に何があったかはわからない。移籍から1年後、フォーライフは解散する。倒産ではない。負債は、フォーライフの持っていた原盤権と後藤由多加が個人の資産を投げうち、全てをソニーに移譲しキレイに解散したのだ。
 しかし拓郎は脱退によって危機を逃れたわけではなかったことは、その後、拓郎が「会社が倒れて、僕もそれに付き合わざるを得なくて大変だった」と語り、別の機会には「後藤とは、いつか二人でハワイの浜辺で、お互いによくやったと言える日が来る」とも語っていたことからうかがえる。ただしこれらをつなぎあわせて真相を探るにはあまりに僅かな言葉たちだが、深い怒涛のドラマがあったことは推察できる。
  そのせいだろうか。このシングルには、気迫が満ちている。新たなるスタートという緊張感が漲っている。声質がいい。LOVE2時代特有のふやけた重低音とは違う、張りのある声。静寂の中に、いきなりボーカルだけが切り込んでくるオープニングからして気合を感じる。
 実に丁寧に組み立てられたメロディーもイイ。それにしても「謝罪の歌」である。「ごめんね、軽率に躓くなんて」「もう一度僕を見て 君をまた守らせて」「二度と流されたりしない」実に徹底した謝罪ぶりだ。当時のテレビ出演で「拓郎さん、何をしちゃったんですか?」という古館伊知郎のツッコミに集約される。
 それにしても いろんなことで注目を浴びた曲だが、作品それ自体としてはあまり追憶されていない気もするが、抒情的で素敵なナンバーではないか。
 つま恋エキシビションで歌い、どこかの島で膨大なビデオを放り投げるプロモも効果的だった。そうそう、その後にアルバム「こんにちわ」にリテイクされたアレンジはいただけない。あくまでシングル・イズ・ベスト ということで。そうそう初めてのお披露目は、ラジオ番組内でのアルフィーとのセッションだった。ゆるいセッションだったのだが、こういうところに御大の色気と魅力が溢れ、ファンとしてはたまらなかったりする。これは別格ということで。

2015.11/29