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証明

1980年
作詞 吉田拓郎 作曲 吉田拓郎
シングル「元気です」

ギター一本で炸裂する至極のロック魂

  1980年10月発売のシングル「元気です」のB面。音源は1980年7月27日の武道館公演の弾き語りコーナーからライブ収録されたものだ。若干舌が回ってないところもあるが、生きのいいシャウトが何より貴重だ。
 もともとは前年の12月の小室等・西岡たかしとのジョイントライブ「十年目のギター」で初披露された作品。名曲でありながらアナログシングル盤のB面にしか入っていなということで、伝説のB面として長らく幻となっていた。しかし、拓郎の話では1980年11月発売の名盤アルバム「アジアの片隅で」の一番ラストの曲として収録の予定だったそうで、本人は決してこの曲を過小評価していたわけではないことがわかる。  長大な作品「アジアの片隅で」を収録したためにアナログのLPの収録時間が限界になって随分苦慮したようである。しかし、もしこのアルバムの最後に「証明」が入っていたとしたらどうだろうか。ほぼ神盤決定といっていいだろう。
 このパワフルな歌声。これを弾き語りだからフォークだと類別されてしまうのは、拓郎ならずとも不満だろう。そこいらのロック・ミュージシャンなんかにも負けない魂のロックを感じる。

  なお「這いつくばって そして踏みにじられて だけど己の証を生きてる証を確かめてみたいから」というように、拓郎は当初このタイトル「証明」を「あかし」と呼称していた。今は「しょうめい」に落ち着いたらしいが。

 とにかく戦闘的でしかも煽情的な歌がたまらない。圧倒的な音楽の塊になって迫ってくるかのようだ。

 「戦えるだけでいいすべてを燃やせ 負け犬になったら路地へともぐりこめ!
  消え入るようなそんな生き方もある それも自分の何かだ 言えない何かだ!
  確かめてみるがいい」

 数々の崖っぷちを、時には、まっさかさまに落っこちながらも這い上がり、歩き続けてきた吉田拓郎だからこその説得力あるフレーズ。圧倒的な勇気をくれる。それに「敗北」に対してもきちんと寄り添う心を見せてくれる優しさ。これ以上のロック魂はあるまい。

 後年2002年、若手パンクロックバンドの「ガガガSP」が突然この「証明」をカバーしたときにはひっくり返って驚いたものだ。「落陽」でも「人生を語らず」でもなく、なんというクロウトな選曲なのか。しかも弾き語りではなく独自のロックナンバーとして再生させていた点にも唸った。「ギター一本」=「フォーソング」=「吉田拓郎」という世の中のありがちな定説にとらわれずに、実に見つけにくい場所にあったこの作品を発掘し、そこからロックのスピリットをしっかり摂取した若者たちがいたことに感動した。世の中決して捨てたもんじゃない。

2015.9/21