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ロマンチックをおくって

1991年
作詞 吉田拓郎 作曲 吉田拓郎
アルバム「detente」

どこへ行く恋愛相談、どこへ行くロックンロール

 

 「ロマンチックをおくって」とはまたロマンチックなタイトルでありフレーズだ。ロマンチックが止まらない・・って、それは松本隆だが、こっちも負けない。御大が、深夜に恋愛相談を受ける。恋愛相談といえば「まあまあ」(シングル「I'm In Love」のB面)という作品がある・・って、これはほぼマニアのみ知る世界に近い。そちらは男性からの恋愛相談だが、こっちは女性からの相談だ。しかも深夜の長時間の電話相談だ。さすが御大、すべての恋する若者の味方でありラブソングの総帥である。恋愛はオレに聞けと張り切る御大が頼もしい。特に女性の場合はチカラが入ることもわかる(笑)。
 彼との別れの愛憎に取り乱す女性に御大は気を配りながら辛抱強く相談にのる。「愛の取引」を「裏切りなんて今さら言うのはおかしいよ」とキメる。Cool!!かっけーぞ。
 この恋愛相談の詞がロックンロールで展開する。御大にロックが必要である。ロックシンガーだから当然だ。しかしベタなロッケンロールはどうなんだろうか。例えば「ガラスのワンピース」「男と女の関係は」あたりは、いかにもベタなロックでいただけない。あくまで個人の意見だが。御大はロックシンガーであると同時に、天才メロディーメーカーなので、ただのロックではなくメロディアスなロックンロールこそ真骨頂だと思う。この作品はメロディーがアップダウンしながら、時に弾けたり・・とドラマチックにギンギンと走る走る走る。その意味でこれぞ御大というご機嫌なロックナンバーであり、アルバム「detente」の柔らかな雰囲気な作品群の中では熱く、若々しく艶のあるボーカルをみせてくれる。
 そして、ご機嫌なロックンロールの勢いにのって作品は後半で暴走を始める。「僕の中に変化が起きた」え?「少したったらもう一度電話をくれないか、本当は君を愛し始めているらしい」だから「ロマンチックをおくって」おくれ・・・ときたもんだ。おいおい。下心炸裂なのか、いや愛とロックの命ずるままの自然の結果なのだろうか。ともかく御大の恋愛相談は、あらぬ方向に進むのだ。どこへ行くんだ。さすが御大は、恋する自分の味方でもあったのだ(笑)。いいのだ。それこそロックだ。このころは、まだ荒くれた危険な不良の雰囲気がまだ結構あったのだな。
 この作品はステージで演奏されたことは一度もない。しかし2001年ころ、御大がビッグバンドツアーや公民館ツアーを模索しているころ、マハロのサイトでステージでこんなロックンロールを歌いたいということで、この「ロマンチックをおくって」のデモテープを流したことがあった。御大にとってお気に入りのロックナンバーなのだとわかった次第だ。それにしても実にていねいに作りこんであったデモであった。このサイトのつぶやきで自分のデモテープ集の音源をみなさんにあげますので、ダビングしてください・・と宣言して、ファンをぬか喜びさせたことがあったが、そんなことは実現するはずもなかった。無念。打たれ強く生きることが御大のファンには必要だ。
 

2016.11/20