t.y life

まるでPillowのような作品に

　この辺の作品になると、ほぼ記憶から飛んでしまう危うさがある。心して気をつけなくてはならない。アルバム「Hawaiian Rhapsody」は、他人の作詞・作曲の作品が大半を占める。例えばアルバム「サマルカンドブルー」は、加藤和彦・安井かずみ夫妻に任せてシンガーに徹したといわれるが、完全に二人の作詞・作曲で拓郎が加わっていない作品は、3曲だけだ。
　しかし、こっちは7曲。この作品も、作詞　川崎真理子　作曲　武部聡志で拓郎は関わっていない。要は、作品制作からレコーディングまで、どっぷりとLOVE2のメンバーのプロジェクトにお任せしたという感が強い。
　本人のオリジナル作品が殆どないアルバムと来れば、本来、私のように頑迷固陋なファンにとっては、怒り心頭といったところだが、さほどのファンの怒りを買わなかった。何故だろうか。
　ひとつは、「LOVE2あいしてる」も3年目。よく言えば円熟期、悪く言うとバブルの真っ只中。古老のファンは、それまでに、あれやこれやに驚かされ続けて、このころまでに、もう怒る元気が尽きていたのだと思う。というか、もう多少のことには驚かなくなっていたことがある。
　もうひとつは、このアルバム発売と同時に、実に2年ぶりのコンサートツアーが挙行されたので、そっちにファンの注意がそれたからだと思う。しかも、前回、前々回のツアー(外人バンド)では、腰痛の関係でずっと椅子に座って歌っていた拓郎が、このツアーから再び立って歌うことに。まさに「直立歩行」したことへの驚きにも気を奪われていた。進化論かよ。
　トレンディドラマのような生活臭のない、でもちょっと眩しいラブソング。いかにも時流を意識したJPOPのようなメロディー。拓郎のイメージからはかなり遠いが、拓郎は、その天賦の才で、こういう歌でも見事に歌いこなしてしまう。「君はpillowのような人っさ、やわらっかっくぅ」あたりの表情豊かな歌いこなしも見事だ。これはこれで作品としてはOKなのだが、問題は、拓郎がこういう歌を歌う必要性があったのかどうかというところだ。でもまぁ、こうして作品になっているのだし、こういう拓郎もあったという記録か。あ、でも、いいよ、例えば作曲者に気を使ったりしてステージで歌ったりしなくて。

　そもそもタイトルが「Pillow」って欧米かよっ! 調べたら、作詞の川崎真理子さんは、その後イギリス人と結婚してロンドンに住み現在は、「マリコ・スミス」と名乗っているそうだ。・・・欧米じゃん。

2015.8/21