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男と女の関係は

1983年
作詞 吉田拓郎 作曲 吉田拓郎
アルバム「情熱」/アルバム「吉田拓郎 ONE LAST NIGHT IN つま恋」/DVD「85 ONE LAST NIGHT in つま恋」

確かに誰にもわからない、確かに二人だけの問題だ

 1983年前期(5月)発表のアルバム「マラソン」では、やんわりとオブラートに包まれていた森下愛子との恋愛路線も、同年後期(11月)のアルバム「情熱」ではかなり露骨にヒートアップしてくる。ここまで歌って大丈夫なのかっ!?という作品が増える。その一曲がこの「男と女の関係は」だ。 「男と女の関係は誰も知らない、わからない」と言いながら、実際とてもわかりやすい歌だ。ある意味、この恋愛に心を決めて「俺の言うとおりしてもらう」と強引にリードをとって突っ走る覚悟の歌でもある。これほど率直な不良系・恋愛路線の歌というのは他にあるまい。
 週刊誌・ワイドショーのインタビューに対しても「『あなたが誰かに惚れたのと大した違いはありません。』毎日の中ちょっとした出来事だから邪魔するな!』と戦闘モード全開だ。当時のワイドショーのスクープで、六本木でデートしているところを直撃され、すかさず森下愛子をタクシーに乗せて逃がし、拓郎が一人で、あの将棋の駒のような顔をした須藤甚一郎レポーターと対峙しているスリリングな映像がまざまざと浮かんでくる。
 当時いろいろなスタンスの拓郎ファンがいたと思うが、地味にフツーに生きている拓郎ファンにとっては、この手の不良・恋愛作品は、なかなか感情移入がしにくくなっていた。
 このような拓郎の恋愛路線の加速と王様バンドがライブの場数を踏みながら充実していった時機がぴったりと重なる。熟練してひとつの塊となってうねるようなバンド演奏と二人三脚で、恋愛路線・サウンド充実路線が進行していった80年代であった。この作品の究極は1985年のつま恋での演奏だろう。ビデオにも残されている。明け方近くに、渾身のロックンロールとして繰り広げられた歌唱と演奏は、詞への感情移入とかファンの文句など入る余地なく、もう観客はひたすら恐れ入りましたというしかないド迫力だった。拓郎が、演奏中、ギターを抱いてステージに両膝を着いて、ギターと心中するように座り込んだスタイルには圧倒されたものだ。
 そういえばこの歌詞の中で、拓郎は「長続きしないゲームだと思ってくれてもいいんだぜ!」と啖呵を切った。しかし、この二人関係は、その後も、時の流れの中をたゆとうように実に長く長く続いている。「男と女の関係は誰も知らない、わからない、すべては俺たち二人の問題さ」…当時は吐き捨てるように歌われていたが、こうして今思うと実に含蓄のある真理ではないかい?

2015.10/3