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男の子、女の娘(灰色の世界Ⅱ)

1970年
作詞 吉田拓郎 作曲 吉田拓郎
アルバム「青春の詩」

ヤらしく爽やかなポップの才能

 題名を聴いて、「郷ひろみ」しか浮かばなかった拓郎ファンは申し訳ないが二軍落ちだ。って、何の二軍で、何すんだ。1970年のデビューアルバム「青春の詩」に収録されているから、当然こっちの方がHIROMI GOより古い。あっちは、パクリではないかとすら思う。
 そもそもアマチュア時代、広島フォーク村のリサイタルで、イロモノ企画として作ったとのことだ。アルバム「青春の詩」には、デビュー盤だけあって今聞くには厳しい作品もある。しかし、この作品は、多少気恥ずかしいし、サウンドが古いことはあっても、ポップな才能に溢れた実にいい楽曲だ。知らず知らずに心が弾んでウキウキするような、デビュー盤にして既にフォークソングなどというものを踏み越えてしまっていて、やっばり吉田拓郎は、天才だと唸る。
 副題が「灰色の世界Ⅱ」とあるが、これは、同アルバムの「灰色の世界Ⅰ」の連作という趣旨なのだろう。この2曲は、「孤独をいつしか売り物にして、さびしがり屋と勘違いして」という歌詞で結ばれている。これは「イメージの詩」ともつながる。この時の拓郎の大切なフレーズだったことがわかる。
 ともかく、なんといってもデュエットの中沢厚子さんの歌声が、透明で神がかり的に美しい。当時はまだ女子高生だった。当時のエレックレコードの専務で拓郎の担当だった浅沼勇の紹介とのことだ。少し小難しく淫猥なところもある詞だけれど、中沢さんのボーカルのおかげで実に涼やかな一篇になっている。「赤く歪んだ月がぁ」の声の伸び型はたまらない。中沢さんはユーミンや吉田美奈子と同期デビューというが、ラジオ番組「小室等の三ツ矢フォーメイツ(文化放送)」、「山本コータローのともだちの歌(ラジオ関東)」のアシスタント・パーソナリティとしての印象が強い。番組で当時の新曲「人生を語らず」のシャウトを聴きながら、「デビュー時の拓ちゃんは可愛かったのに」とつぶやいていたのが印象的だ。やはり最初を知る女性は強いものだ。いみふ。
 最近もコラボブームで、J-POPのミュージシャンが男女デュエットでコラボする様子が散見される。その意味では元祖だ。デビュー盤から既にコラボしているのだ。なおカラオケでこの歌をデュエットしている一般男女を何度か見たが、注意しないと、歌詞のせいでとてもヤらしい雰囲気になってしまう。若き拓郎、女子高生中沢厚子を意識して爽やかに歌うよう心がけたい。その意味では「銀恋」や「居酒屋」あたりよりも罪深いデュエット曲ではないか。

2015.10/3