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Ossan

2001年
作詞 吉田拓郎 作曲 吉田拓郎
アルバム「こんにちわ」

結局、人はすべてOssanとObasanである

 2000年5月、記念すべきインペリアル・レコード移籍第一弾シングル「トワイライト」のカップリング曲として発表された。自作の詞も面白いし、ブルージーなメロディーもユニークだ。音楽的に聴けば力作だ。
 しかし、どこか全体的にイマイチ感が漂う気がしてならない。なぜか。はっきり言うと、この作品からは「LOVE2のバブル臭」がする。テレビ番組「LOVE2あいしてる」で、自分の殻を破った拓郎の勇気は素晴らしかった。そして拓郎の挑戦は成功し、「吉田拓郎」という名前が新鮮な響きをもって世間に再認識された。その意味で番組の功績は計り知れない。拓郎ファンたるものこの番組に足を向けては寝られない。
 その一方で、拓郎に対するお茶の間人気が高騰し、特に女子高生らの「拓郎さん可愛いぃぃ、素敵ぃぃぃ」という黄色い声援が上がった。拓郎は「俺には女子高生のファンだっている。もうおじさん、おばさんのファンはいらん!」という啖呵を切るに至った。この頃の拓郎のバブリーな人気の盛り上がりこそ、人呼んで「LOVE2」という。って私が呼んでるだけだが。
 この作品も「Ossan」=「おっさん」というタイトルどおり、50歳を過ぎた拓郎の生活と意見が、キンキらをはじめとする若い世代に向けて語られている。ホントのおっさんの私には、ただ「Ossan」というローマ字表記のセンスからしてアウトな気分にさせられる。
 詞には若い世代とのかかわりを模索する拓郎の心情も描かれている。「君は何が好き?」「わからないことが多いんだ。一緒に歩こうよ。」これは拓郎の若者へ歩み寄りだ。決して長く拓郎を支援し続けてきたにファン向けての歌ではない。そこに、この歌の空虚さを感ずるのだ。もちろんヤッカミだけどさ。  考えてみれば、拓郎が、これまでマニアックなおじさん、おばさんたちのファンにどれだけ苦しめられたか。自分だってその加害者側の一人だ。拓郎は何かする度に、ファンから小言と文句を言われ、昔は良かった、素敵だったと指弾される。80年代に拓郎は「正直言ってオレはもっとボーッとしたファンが欲しいのよ」とボソリと語っていたことがあった。ファン対応に疲れたというホンネだろう。柴門ふみの証言を借りるまでもなく、なんといっても元はスーパーアイドルだったのだ。「LOVE2バブル」は、原点ともいうべき本来の拓郎の姿を思い出させたのではないか。そして見事に拓郎蘇生する。

 あれこれ文句を言っても、さらに時は流れ、キンキもその周りの女子高生たちも、たぶんおじさん、おばさんになってしまった今、バブルははじけて、すべてはノーサイドだ。 但し、 間違っても「どーだ拓郎、おじさんおばさんファンの有難さを思い知ったか」などと勝ち誇ってはいけない。小言と文句と昔の話しかしない私達ファンが、拓郎を追い詰め、あそこまでバブルを膨らませたのだと反省もしたい。
 それに、その後、拓郎は、ありったけのパワーをこめて「おじさん、おばさん」の「お祭り」であるとして「つま恋2006」という偉業を成功させてくれたことも忘れちゃならない。バブルの中でもossanは、音楽の灯を常に燃やし続けていたことに感嘆すべきだ。彼我ともに、これから柔らかな気分で、無防備に「たくろぉぉぉ、カッコイイぜ!」と心震わすことの大切さを噛みしめよう。この作品に漂うバブルの残り香のようなものを嗅ぎながら思うことしきりだ。

2015.10/3