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大いなる

1977年
作詞 吉田拓郎 作曲 吉田拓郎
アルバム「大いなる人」/アルバム「TAKURO TOUR 1979」

小さな歌に宿る大いなるエッセンス

 アルバムタイトルは「大いなる人」なのに曲は「大いなる」。なぜですか?という当時のラジオ番組で山田パンダからの質問に拓郎は「そういうこともあっていい」と答えにならない答えをした。たぶんこういう時は拓郎は何も考えていないのだ。
 ゴージャスな鈴木茂のアレンジの曲群の中に、唯一の拓郎のアレンジによるシンプルな弾き語り曲。ひっそりと佇む小品のようなイメージがある。しかしこの作品にこめられた気持ちは小さくはない。拓郎はアルバムのコンセプトとして「願わくば男も女も、この厳しい時代に飲み込まれることなく大いなる気持ちで生き抜いてほしいという熱い心情を歌った」と記していた。それを体現した詞「いずれの道も避けるな いつでも自分を確かめろ 大いなる人生 手助け無用」。英訳すると「Never shrink back Always be sure. It's my own Life. I don't need anyone's help.」って、私が英訳したわけではない。ご存知のとおり80年代前半にあふれていた「TAKURO」のロゴの下に碑文のように添えられていたフレーズだ。
 話はそれるが、ライブの時、透明アクリルの譜面台に、この「TAKURO」のロゴが透かしで入っていた。譜面が載っているときは、このロゴが見えないのだが、ラスト近くになって譜面の枚数が少なくなるに連れて、このロゴが照明に透けて、うっすらと見えて来る。全曲譜面が床に捨てられ、つまりはラストのラストになると、譜面台のロゴが現れるのだ。ああ、もうタメイキが出ちゃう。
 そして1978年の「大いなる人」コンサートツアーのライブでは、鈴木茂のアレンジで歌われたのだが、アルバムの弾き語り小品とは全く違う、派手なアップテンポのロックンロールに転生していて、えらくカッチョイイのだ。それでもってサビ「いずれのぉぉぉ道もぉぉ」で拓郎も思い切りシャウト。そもそも拓郎にシャウトされるとそれだけで得した気分になれるファンにはたまらない。
 しかし、ちょっとカッコよ過ぎたと反省したのだろうか、翌年の篠島では、原曲のイメージに戻されて「TAKURO TOUR 1979」に収録されている。
 ある意味、吉田拓郎の濃縮コンソメスープの素のようなこの作品。「願わくば男も女も、この厳しい時代に飲み込まれることなく大いなる気持ちで生き抜いてほしい」というこのメッセージは今の世にも、今の自分にも痛切に響いてくる。それを思って、スープの素をお湯に戻すようにもう一度聴き直してみよう。

2015.9/23