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oldies

2001年
作詞 吉田拓郎 作曲 吉田拓郎
アルバム「Oldies」

小品なれど神は細部に宿るのだ

 幻と言われていた1972年スバル・レックスのCMソング「僕らの旅」と同年のニッポン放送のラジオ番組「バイタリス・フォークビレッジのテーマ」を合体させて、約30年後の2001年に初めて公式音源となった。公式音源になったことは嬉しいが、何も別々の2曲を一緒にすることはないだろうという不満も残る。しかし、そこは音楽家。違和感なくひとつの組曲になっている。
「僕らの旅」は幻といわれつつも、販促用のソノシートが大量に配られていたおかげもあって、多くのファンの記憶に刻まれた。「共鳴レックス」の囁きが頭から離れない人も多いと思う。また、はにかんだ喋りで「ぇー、たくろうです・・・」という前説も一緒に記憶になっていることも多かろうと思う。
「時には疲れた体を木陰に横たえて思いに耽るのもいいさ 旅はまだ続く」「いろんなことがあるさ いろんな人に会うさ 僕らの旅は果てしなくつづく」シンプルな小品だが拓郎のエッセンスが見事に凝縮され心に刻まれる。
 販促用にもいろいろ種類があったらしい。ネット時代になってから発生した拓郎ファンの集会に初めて行ったとき、コレクターのおじさんファン達がこの非売品ソノシートを持ち寄って品評会をするうちに、オレのが一番レアだと大喧嘩が始まって驚いたものだった。マニアとコレクターの沸点の違いを学んだことは貴重な経験だった。
 「フォークビレッジのテーマ」のオリジナルは、ニッポン放送の第一スタジオで木田高介バンドをバックに収録された。アルバム「人間なんて」の「川の流れの如く」も木田高介だが、ちょうど同じノりだ。「フォーク番組」のテーマでありながらカッチョイイ、ロックナンバーになっている点が拓郎らしい。その意味でこの「Oldies」のゆったりめのアレンジは残念だが、このアルバム収録で、あの当時番組では流れなかったこのテーマ曲の三番までを初めて確認することか出来た。特に三番の「ここに一人でいる僕を 夜空のどこかに記しておきたい 愛する人に 届けと」というなんともプリティなフレーズが嬉しかった。過去に何度か拓郎は、この曲は「レコードにしておけばよかった」とつぶやいていたことがあったが、ようやく実現したことになる。ちょっと遅すぎた気もするが。

2015.10/4