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Not too late

1998年
作詞 吉田拓郎 作曲 織田哲郎
アルバム「Hawaiian Rhapsody」

すべてのODAよ、御大を高く掲げよ

 LOVE2バブル絶頂期のアルバム「ハワイアン・ラプソディー」は、詞・曲のほとんどを他人に任せている。この作品は、そんなアルバムでは数少ない拓郎自身の書いた詞で、曲は「織田哲郎」という異例の顔合わせだ。
 シリアスな詞。この時、拓郎が切なく思っていた相手は誰なのだろうか。自分の死後残される人。妻か、恋人か、あるいは娘のことだろうかと下種勘が頭を巡る。いずれにしても深い愛に溢れた素敵な詞だ。
 そしてヒットメーカー織田哲郎のメロディー。日本の歴代シングル売上作曲家記録は、1位筒美京平、2位小室等・・ちゃう哲哉、そして3位が織田哲郎。「小田」ではなく「織田」さんは、おそらく拓郎ファンの生活の中であまり縁がなかった存在ではないか。かつてLOVE2に出演の時、織田さんは「拓郎さんは私たちのヒーローでした」と持ち上げたが、ロンドン帰りの稀代のヒットメーカーが、おべんちゃらを言いやがってと信じていなかった。しかし、その約15年後私は自分の不明を大いに恥じなくてはならなくなる。2008年の織田さんが自分の歴史を語るロングインタビューで、数あるヒット曲の中から、この地味な一曲「Not too late」について語った。
 「俺、拓郎さんのことはボーカリストとして大好きだし、このオファーはうれしかったね。」
→う、・・しかしこれくらいのお世辞は言うかも。
 「「つま恋2006」のライブ、見た?あれ、最高だったでしょう。(略)中島みゆきさんが出てきて「永遠の嘘をついてくれ」だものね。たまんなかったな。」
→「たまんない」・・あのつま恋を、私たちと同じ、はあと目線で感激しているのだ。
  「吉田拓郎さんって詞や曲で評価されることが多いけど、ボーカリストとしても最高だと思うよ。なにしろ声が素晴らしい。拓郎さんはホント色々な意味で、凄いところで戦い続けてきた人だと思うよ。」
→そうだ、そうなのだ、戦い続ける人の心をわかってくれているじゃないか。
「拓郎さんって、多くの人から尊敬を集める対象でありながら、いくつになっても常にみんなに可愛がられるような愛すべきキャラクターだよね。生まれついてのスターなんだよ、拓郎さんは。」
→このあたりになると「お願い、織田さん、もっと言って、もっと言ってぇ」とお散歩連にれてってもらうときの飼い犬みたいになっている自分がいる。
 久々に本物の「レスペクト」を見せていただいた。これまで疑っていたことを心からお詫びしたい。記録1位の天才作曲家筒美京平はかつて「吉田拓郎くんが出てきた時だけは怖かった」と語った。2位の小室哲哉は、・・えーといいや略。そして3位の織田哲郎のかくも深きレスペクト。やはり天才だから天才の凄さがわかるのだ。これはファンも同じだ。拓郎に興味がない音楽ファンたちは、きっと才能がないに違いない。むははは盛り上がってきたぞ。
 というわけで、織田哲郎が深い愛をこめて作ったこの作品を聴き直さずにはいられない。ただ少しボーカルの音がくもっているようなので、拓郎本人が、もっとクリアなボーカルでライブないしはセルフカバーして欲しいものだ。

2015.10/11