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街角

1980年
作詞 岡本おさみ 作曲 吉田拓郎
DVD「90 日本武道館コンサート」

歌えるもんなら歌ってみろ

 これは幻の作品の部類かもしれない。ステージでは歌われたが、公式シングル・アルバムになく、唯一、90年武道館ライブで映像と音源が公式化している。料理屋のメニュー表には書いてない常連が頼む裏メニューみたいなもんだ。80年初頭に出来上がり、80年春ツアーで、タイトル未定「Amの唄」として披露された。その後「街角」というタイトルが付けられた。
 岡本おさみの詞で、「地下鉄がゆっくりと落ちてゆく」「ハイウェイは幾重にも伸びている」そんな殺伐とした都会での恋人同士の寂寥たる孤独が描かれている。この作品が公式化しなかったのは、岡本おさみが、この詞のモチーフをブラッシュアップさせ「まるで孤児のように」という作品に転生させ、そちらがアルバム「アジアの片隅で」に収録されたためではないかと思う。そこでは、沈んでく地下鉄も伸びてゆくハイゥエイというプロットも都会の孤独も、より洗練されたカタチで出てくる。
 しかし、この作品は作品で独自の味わいがあり、たぶん拓郎はステージで大切に歌ってきたのだろう。とにかく性急な歌だ。もともと音楽界の早口言葉と揶揄される御大だが、これはかなり早いぞ。
 ここで独断で、「早口歌唱難解度」を評価して順位をつけるので参考にしてほしい。何の参考だよ。なお御大の自作に限り中島みゆき作の「永遠の嘘をついてくれ」は対象外とした。

  5位 「街へ」
   (原宿表参道は)♪誰にも語られなかったドラマを
   (寸評)
    御大、レコーディング時に苦労し、おまえらも歌ってみろとスタッフ陣山さんらにも歌わせていた。スタッフが歌えてどうする。
  4位 「まるで大理石のように」
   (好きだよなんて口走る時)♪唇に指、押し黙る壁
    (寸評)
    これは簡単そうで意外とムツカシイ。松本隆にしては岡本おさみクラスの字余りではないか。
   3位 「7月26日未明」
   ♪人は生まれた時に既に旅をしている
   (寸評)
    アップテンポな演奏とあいまってかなり困難度が増す。シャウトして誤魔化すのも一考。
   2位 「親切」
   ♪言えなくなったのは、いつからかまでも忘れちまった
    (寸評)
     昔から御大もステージで何度も噛んだと述懐する、難所中の難所と言えましょう。

   そして栄光の第1位が「街角」
     ♪肩抱き行きずり生きる命感じながら
   (寸評)
    これはもう聴く方も歌う方も何を歌っているのかわからない。なんかの呪文か。ステージよりデモテープの方がピッチの速い分難易度はさらにアップ。
 以上だ。>以上じゃねぇよ。

2015.12/12