uramado-top

旧友再会フォーエバーヤング

1984年
作詞 吉田拓郎 作曲 吉田拓郎
シングル「旧友再会フォーエバーヤング」アルバム「FOEVER YOUNG」/アルバム「豊かなる一日」/DVD「Forever Young Concert in つま恋 2006」/DVD「TAKURO & his BIG GROUP with SEO 2005 Live」

毎日が新しい始まりの日

 もとは1982年に、山本コータローと山田パンダのユニット「山本山田」のために提供された。「山本山田」。名前からして哀愁が漂う。他にやりようはなかったのかユイ。その後2006年のつま恋のオープニングのこの歌で山田パンダと拓郎がツーショットで歌うが、あれはたとえてみれば、「全部抱きしめて」を作曲者の拓郎と歌唱しているデュオに片割れ堂本剛がデュエットするのと同じ状況で、山田パンダは明らかにそういうスペシャルな気分で歌っているのだが、それに気づいていた人は少ない。拓郎もたぶん忘れていた。
 提供した82年当時拓郎はラジオで素晴らしい曲が出来たと豪語していた。すまんが、そこまでは。いまいちな印象で、ヒットもせず山本山田とともにフェイドアウトしてしまった。それが突如1984年になって拓郎の本人歌唱で復活。名盤アルバム「フォーエバーヤング」といえば「大阪行きは何番ホーム」「LIFE」「7月26日未明」「ペニーレインへ行かない」などのなみいる名曲。その中からのシングルカットの大抜擢である。ホントにそれでいいのかよ。案の定、拓郎もこの曲をシングルとすることにフォーライフのスタッフの猛反対に会いと大ゲンカになったと言っていた。それでも意地を通すのが拓郎。
 また幾星霜を経てつま恋2006のオープニングという異例の大出世。こうなるともはや曲の好き嫌いなど関係なく、学校の校歌みたいに有無を言わさずに当然そこに制定された曲だと考えねばなるまい。
 しかしノー天気な同窓会ソングと決めてしまうのも早計だ。拓郎がこの作品に込めた思いとは何か。「山本山田」の原曲の時には、曲の最後に二人のセリフが入っていた。もちろん拓郎の作詞だ。拓郎はここのセリフこそが涙の出るポイントだと熱く語っていた。久しぶりに再会する二人。とりたてて幸せとはいえないそんな人生の中でかつての夢と今の現実を懐かしく語る。しかし曲の最後のセリフは、「山田さん、せっかくだからどこか寄って昔の話でもしませんか?」「いや山本さんには悪いけれど今日は帰ります。」というもので、再会ソングのしめくくりにしては妙に後味が悪い。だがそれこそが拓郎の思いだった。「旧友の誘いを断り帰ってしまう。ココなんだよ。」と拓郎は力説していた。
 忙しさに疲れた日々に、昔の懐かしさは蜜の味がするけれど、そこに浸りきってはいけない。ここでも拓郎は人と人との距離を考える。懐かしいだけの人との関係に溺れてはいけない。そんな矜持を歌おうとしてのかもしれない。
 思えば拓郎の人生は常に「昔が良かった」との戦いだ。この曲がボブディランの「フォーエバーヤング」にインスパイアされていることは間違いない。ボブディランは、この曲で「 毎日が きみの はじまりの日 きょうも あしたもあたらしい きみの はじまりの日」と歌うが、そのエッセンスは同じだ。懐かしい友に会えども、つねに新しいはじまりの日。いつも心にマッターホルン。だからこそフォーエバーヤング。この作品を聴く時は、南こうせつの「元気ですかぁ」の雄叫びと笑顔までが浮かんでくるのでその妄念を打ち消しつつ、拓郎の「矜持」を思おう。

2015.12/12