危険な関係
作詞 吉田拓郎 作曲 吉田拓郎
アルバム「午後の天気」
スローとロックの静かなる戦い
2011年11月のKinKi Kidsのアルバム『K album』に提供され、拓郎本人のオリジナルは、翌年の6月20日のアルバム「午後の天気」に収録された。ラジオでの話からすると、2011年の夏ころに拓郎のオリジナルが録音され、その後KinKi のバージョンが作られたようだ。
同曲ながら拓郎とKinKi のバージョンはテンポも様相もずいぶん違う。65歳の方がアップテンポで性急なロック、若者の方が、スローなポップになっている「逆転現象」が面白い。KinKi のアレンジにあたっては、ともかくアレンジャ―は拓郎の作品をかなり「咀嚼」して作り上げたことになる。自分の心を静かに見つめるようなテンポと曲想のバージョンだ。拓郎もこの編曲家CHOKKAKUのアレンジを高く評価していた。しかしこの編曲家、名前からして読めん。誰なんだ。「一三」とか簡単な名前に慣れてる拓郎ファンには厳しい。
しかし、しかし、聴き手にとっては、そういう作り手の順序手順など知らないところだし、先に発表されていたKinKi のバージョンが耳慣れたところに、本家の登場ということになる。ゆったりとしたスローで内省的なKinKi バージョンを打ち破るように、アップテンポの拓郎バージョンはドラマチックに衝撃的で、メチャメチャ、カッコイイと痺れる。性急に言葉をたたみかけるボーカル、その拓郎とともにうねるような演奏の見事な心地よさ、熟練のロックである。ああたまらん。KinKi のチンタラしたバージョンが拓郎のバージョンの引き立て役になっているというのか!とKinKi ファンに怒られるかもしれないが。まぁそういうことだ。おいおい。いや、お互いの色彩が正反対違うために、互いの色をくっきりと引き立たせあう「補色」関係というべきか。もう遅いぞ。
「危険な関係」は、言うまでもなく拓郎の目から見たKinKi の二人の関係。その恋愛感情をも思わせるような禁断の関係に切り込んでいる。KinKi ファンでもこの詞は結構話題になったようだ。確かにKinKi は拓郎が50歳になってからの蘇生に大きな力を与えた拓郎にとっての恩人である。それだけでなく、かつての拓郎の「原田真二」の異常な大絶賛を思わせるような、「拓郎の「美少年好き」の系譜」も感じる。KinKi 二人の恋愛的関係にとともに拓郎の微妙な恋愛感情もからみ、複雑な「危険な関係」が詞のテーマになっている。ただ拓郎の詞は、そういう深いテーマを切り取るには少し舌足らずで詰めが甘くはないか。原田真二、KinKi の美少年の系譜に深く絡んできた松本隆あたりに参入していただいて詞の世界を彫琢してほしかった気もするが。いずれにしてもアルバム「午後の天気」の大切な一角だろう。
2015.12/12