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2003年
作詞 吉田拓郎 作曲 吉田拓郎
シングル「純/流星2003/ホームラン・ブギ2003」

君よ歌詞の語尾を高く上げてくれ

 「僕が泣いているのはとても悔しいからです」「人の尊さ優しさ踏みにじられそうで」「どけ どけ どけ 後ろめたいヤツはどけぇ!」 ・・・やっぱ拓郎はこうじゃなくちゃ。お酒で言えば、水割りでもウーロン割でもなく、氷も入れない「ストレート」、温泉で言えば設備の整った「SPA」などではなく、秘境源泉かけ流し。
 2003年10月発売のシングルだ。忘れてならないのは、2003年4月の肺がん手術の後の初めての作品ということ。あまり適切な表現ではないが「復帰第一作」だ。拓郎は再び歌えるのか!?リスケした秋のツアーのステージ復帰までの不安の中、祈るように待ち続けたすべての同志たち。そこに経過報告のようにこの歌は届けられたのだった。田家秀樹「豊かなる一日」にこの作品のレコーディングに参加した島村英二氏のインタビューが残されている「だって肺だからね。めちゃめちゃ心配したけど。・・・リハーサルが始まってからは・・ドンドン声がでるようになっていったから安心した・・」と語っている。これはファンみんなの切なる気持ちでもあったのだ。そんな状況だったらからこそ、この作品のキッパリ感が余計に嬉しい。
 パイロット版では「どけぇ」の語尾が上がってシャウトする感じがさらによかったのだが。但しこれだけ厳しい病後だからだろうか。この歌には、気になるフレーズが多い。
  「僕の命この世に捧げてしまっていいさ」
  「僕の命あなたに捧げてしまっていいさ」
  「有象無象の街に灯りをともせ」
  「生きるものすべてが愛でつながれる」
 命の瀬戸際から、自分と世の中をもう一度見直した「祈り」のようなものを感じる。もちろんあくまでも推測だが。雲の切れ間から陽が差し込むような清々しさを感じる。
 さて、この作品は当時の人気アニメ「魁 クロマティ高校」の主題歌となった。拓郎のことを知らない若い子たちが、あちこちのブログでこの主題歌を絶賛していたのは心から嬉しかったものだ。また、昔から、拓郎が主題歌をつとめるドラマや映画は、だいたいツマラナイものが多かったが、このアニメと原作はなかなかの作品だったと思う。特に第3話では、前代未聞。拓郎への大いなるリスペクトを感じる秀作だったりする。なおこの曲のプロモーション・ビデオでは、このクロマティ高校のOPと拓郎がシンクロしている。吉田拓郎がアニメ化されたのは、これが初めてではなかろうか。
 但し、マキシシングル「純/流星2003/ホームラン・ブギ2003」という売り方はタイアップ商戦なのだろうが、なんか雑だ。

2015.10/10

 前略。この主題歌が2019年のLive73yearsで初めてセットリストに入りました…。ということで、これまで何度かライブで歌おうかと言いながら実現せず。永いこと気を持たせやがってと思ったが、実はコンサートの度に何度かリハーサルでトライしていたことを知り、少し申し訳ない気分にもなった。よくぞ歌ってくれた。
 先立つラジオでナイト(第62回)のベストテイクでも取り上げられた。ドラム島村英二、ベース松原秀樹、キーボード中西康晴、ギター徳武弘文。レゲエ・スカのリズムもお気に入りだが、特にこの詞を自ら絶賛していた。なのでこの詞はやはり深く味わうべし。それだけ拓郎のフェイバリットな一作だったことが嬉しい。
 オリジナル“より強くしかかにタフな生き方をしましょう”の歌詞が”したたかに強くなりタフに生きてみせましょう”と微修正されている。”生きてみせましょう”…これもまたよし。
 拓郎も言っていたが、拓郎のボーカルも熱かった。燃ゆる魂、ワイルドなライブバージョンがここに来て誕生したことを心から喜びたい。それはまた島村英二と村石雅行の2バージョンを得られた幸せでもある。

2019.9/28