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いつでも夢を

2001年
作詞 佐伯孝夫 作曲 吉田正
アルバム「こんにちわ」

もっとぉ魅力的であっていいんじゃないか

 原曲は1962年に発表された橋幸夫と吉永小百合のデュエット曲で、いうまでもなく日本歌謡のスタンダード。2001年のインペリアル移籍第一弾のアルバム「こんにちわ」で拓郎が唐突にこの曲をカバーした。
 移籍第一弾のアルバム全10曲中、約1年前に発売されたシングルの「トワイライト」「OSSAN」の2曲に、「君のスピードで」のセルフカバー、そしてこの作品のカバーということで、なんとなく新アルバムを待望していたファンというか私には残念感があった。「あ、拓郎、新曲が足りなかったんだな」という邪推が頭をもたげる。
 しかし、この作品をカバーした由来は、インペリアル・レコードに拓郎を誘った飯田久彦氏がきっかけだということだ。そういえば後にエイベックスに拓郎を誘ったのも飯田久彦だし、かつて大問題になった「ポーの歌」の原曲を歌っていたのも飯田久彦だ。拓郎の人生の節目に暗躍する飯田久彦とは何者なんだ。ともかくその飯田久彦とインペリアル・レコードの若手スタッフたちと拓郎とがカラオケに行ったときに、彼らが明るいノリでこの曲を合唱していた様子に拓郎が心を打たれたことが理由らしい。
 確かに吉田正の曲の持つ素朴な明るさやシンプルなメロディーは、拓郎の作品と通ずるものがある気がする。拓郎が、大作曲家である浜口庫之助からその才能を認められたのも同じ理由からではないかと思う。とにかく拓郎にとってはgood choiceな一曲だ。
 かねがね拓郎は、他人の曲をカバーするときは原曲を離れて思い切ったアレンジでカバーするのが礼儀と口にしていた。そのとおり、原曲の面影のない現代風のアレンジになっている。ただアレンジが少し凝りすぎてあざといかな。さらにそれより残念なのが、拓郎のボーカルのキーが低いこと。低音でボソボソという感じでいまひとつアピール感がない。もっともっと拓郎のボーカルの艶とうまさを活かせたはずではないかとファンは無責任にも思う。総じてLOVELOVEの頃のボーカルは、声が低く声量がない。拓郎のボーカルが復活したのはビッグバンドになってからだと思う。
 今の拓郎がカバーすれば、確実にこれよりも魅力的なバージョンが出来上がるものと確信する。ただ今となっては貴重なこれからのアルバム、これからの大切なライブステージの一曲分を使ってまでこの曲を歌わなくてもいいと思うが。何かの折に期待したい。どういう折かはわからないが。やっぱデュエットではないか。中島みゆきか篠原ともえか中沢厚子がデュエットCDの発売を申し込んで来たりしないか・・・あるわけがないか。

2015.10/3