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いくつになってもhappybirthday

2001年
作詞 吉田拓郎 作曲 吉田拓郎
シングル「いくつになってもhappybirthday」/アルバム「こんにちわ」/アルバム「豊かなる一日」

いつまでも変わらずに元気でいて欲しい人と歌に

 「ただのお誕生日ソングじゃねぇか」という方もいるかもしれないが、これこそは不滅の名曲だと思う。シンプルだが、愛に満ちた、軽やかなポップ。どこにも「こしらえた」感がない自然さ。キャリアを長く積み重ねた2000年代になって、こういうみずみずしい作品をサラリと作って歌える素晴らしさ。いやキャリアを重ねたからこその技なのだろうか。ともかく吉田拓郎の才能の結晶体のようだ。
 「いくつになってもhappybirthday」。まず、このタイトルからして”決まり”だ。かつてファンクラブの特典のお誕生日カセットで拓郎が使っていたフレーズだが、まさに、何歳になろうとも『老若男女』すべての人の生誕を暖かく祝う。コピーライターが悔しがりそうな素晴らしいキャッチコピーでもある。
 そして歌詞。拓郎が讃えるのは、その人の業績、成功、成績でもなく、容姿や性格でもない。ただ「君が君になったこと」「人生に向かい合って歩いている」そのことだ。つまりは「生きてること」それ自体をひたすら誉め讃えて喜んでくれる無条件の愛。「いくつになってもhappybirthday to you」と一度覚えたら忘れない陽性のメロディーに乗せてたたみかけてくる。
 そして、2番と3番の間に別メロディーでインサートされる「いろんなことがあったでしょう 人に隠れて泣いたでしょう」のところ。優しい眼差しをスッと織り込ませるところは、詞的にも曲の構成的にも見事だ。ここで、うっかりすると泣きそうになるツボだ。
 人も町もそして空気すらもよどんでしまった今、こういう無防備に暖かい歌が嬉しい。いいじゃないか、こういう感じで行こうじゃないか、何もかも。あまねくに知って欲しい。吉田拓郎の一レパートリーに収まっているのはなんとももったいない名曲だ。
 こういう場所だから敢えて言ってしまうが、スティービーワンダーの世界的なスタンダード曲「HappyBirthday」よりもイイ(笑)。少なくともタメだろう。どこかとタイアップしたり、あるいは「LOVELOVEあいしてる」がもっと長く続いていれば、もう少し世の中に広く認知されたのではないだろうか。歯がゆい。
 私が大阪市長か東京都知事になったら、小中学校で毎日、誕生日の子を呼び上げて全校で合唱して踊ることを普及・奨励したいのだが。
 このプロモーション・ビデオもドラマチックに凝っていて、Happyな感じがあふれている佳作だ。小さな子がよちよち赤じゅうたんを横切る。この子を撮影合間に拓郎が一生懸命あやしていたという制作現場の裏エピソードもいい。
 ところで、坂崎幸之助のモノマネ芸に「お骨(こつ)になってもhappybirthday」というのがあるが、とにかくこの作品が、末永く幅広く歌い継がれんことを。

2015.4/26