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僕の大好きな場所

2014年
作詞 篠原ともえ 作曲 吉田拓郎
アルバム「AGAIN」

そんなポップな便りが届く

 「KAHALA」の項でも書いたが、ぶっちゃけ、ファンとしては、拓郎のハワイ好きには困ったもんだとずっと思っていた。もちろんスーパースターだからハワイで豪遊しても全然OKなのだが、作品や音楽活動にまでハワイが浸食してくると気持ちは少々複雑だった。
 で、この作品は、思いっきりハワイが舞台で、作詞がシノラー、歌がウクレレ抱えた高木ブーのハワイアンアルバムの代表曲。全編に満ちるハワイ+LOVE2のバブリーな匂いに、申し訳ないが、偏屈偏狭な私は1,2度聴いただけでスルーしてしまっていた。
 それが突然、2014年のセルフカバーアルバム「AGAIN」で、本人歌唱が登場したのだった。忘れていたおかげで、セルフカバーの作品群の中で、純粋な新曲の「アゲイン」とともに貴重な新曲の味わいがある。「アゲイン」が深く静かに問いかけてくる「人生振り返り系」の作品なのに反して、こちらは、まさにハワイということで、実に明るくノー天気な作品だ。これが実に快活でいい。ウキウキするような陽気さをたたえているし、拓郎のホップするようなボーカルも味わい深い。あらためてウマイよなぁ拓郎と感じ入る。
 このほかのセルフカバーが、どれもキラデコメールみたいなアレンジの中で、この作品のポップさと歌のうまさが、まさに元気な拓郎の「生存確認」のフラグになっている気がする。
 というわけで、改めて高木ブーのオリジナルを聴き直してみる。するとこれが実にいいんだなぁ。ゆったりとした南国の風と時間の流れが実に心地よく表現されている。これをスルーしていた自分の不明を恥じる。私は、ドリフターズそして高木ブーが力量あるミュージシャンであることをすっかり忘れていたのだ。
 それにしてもこの詞は果たして当時十代だったシノラーに書けたのだろうか。酸いも甘いも経験した老成感が、随所に覗く。かなり拓郎が手を入れたのではないか。
 ともかく「僕の大好きな場所」は、高木ブーと吉田拓郎の2人の個性が生きたバージョンがそれぞれに残されることとなった。そういえば、高木ブーのカミナリ様のコントの髪型と吉田拓郎のカーリーヘア後期のアフロが似ているとビートたけしがツッコミを入れていたことがあったが。
 こうして「KAHALA」や「全部抱きしめてトロピカル」などとともに、吉田拓郎は、自分の作品の中に「ハワイもの」とでもいうべきジャンルを見事に確立した。
・・・・って、最初と言ってることが違うな。

2015.9/27