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あの娘といい気分

1980年
作詞 吉田拓郎 作曲 吉田拓郎
シングル「あの娘といい気分」アルバム「Shangri-la」/アルバム「ONLY YOU」/アルバム「王様達のハイキング IN BUDOKAN」

そいでムチムチ、ムーチュ、ムーチュ

 篠島直後の1979年の秋のツアーで出来立てホヤホヤの新曲として初めて披露された。当時はタイトル未定で曲のキーから「Fの歌」と仮称されていた。レコードに入れるかどうかもわかんないということだったが、翌年のロスでレコーディングされ、4月には堂々の80年代初シングルの座を得た。人間でいえば異例のスピード出世だ。
 ギターのイントロとサックスの間奏が、いかにも「アメリカ」なサウンドで、異国の地で録音してまいりましたという雰囲気を醸し出している。しかしこの作品は、その後、80年代前半に王様バンドでのツアーで、練り上げられた演奏のイメージがむしろ強い。81年には、アルバム「ONLY YOU」で、バンドサウンドに近いバージョンで入れ直されている。
 それにしても前年に篠島でヒーローとして返り咲いた拓郎に対して例によってコアなメッセージを期待しているファンにとっては、どうよ?という意見もあったが、もちろん御大はそんこと気にしちゃいない。「二人馬鹿、馬鹿ぁ 男と女 愛してますか?大好きですよ」という詞にはメッセージのカケラもない。強いて意味づけようとすれば、もはやそれは「悟り」のようなものだ。評論家の森永博志が当時のインタビューで「なんでコレをシングルにしたんですか?」との質問に拓郎は「不真面目な歌が歌いたかったから」と答えている。答えになっていないが。
 しかし思わず身体が踊りだすようなメロディーとビート。拓郎の音楽的才能の真骨頂である。「ムチムチムチ夢中」を聴くと、大瀧詠一がシチズンのCMソングで「夢中」を「ムーチュ、ムーチュ」と音楽化したセンスと通底するものを感じる。おバカな歌と一蹴してしまうことはできない深い音楽性がある。
 特にいわゆる王様バンドになってからのサウンドの厚みと完成度の高さは驚異的だ。ライブアルバム「王様達のハイキング」に所収されているバージョンでギターとキーボードがバトルするように練り上げられていく神がかりの演奏を前にすると「詞にメッセージがない、思想がない」と文句をつけるほうが馬鹿みたいに見えてくる。好き嫌いを超越して衆目を唸らせる一品になっている。理屈抜きで、この曲のメロディーとノリに身も心もまかせようではないか。

 このシングル発売時に「振付」のついた説明書を貰って、そこには「あの娘といい気分」キャンペンガール募集!とあった。結構本気だったんだなフォーライフ。後年出会った拓郎ファンがこのことを誰も覚えておらず寂しい思いをしていたところ、なんとキャンペンガールに応募したファンの方と巡り合えて感激を通り越して驚いたものだった。あのキャンペーンはどうなったのだろうか。

2015.11/1