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AKIRA(アキラ)

1980年
作詞 吉田拓郎 作曲 吉田拓郎       
アルバム「TRAVELLIN' MAN LIVE AT NHK STUDIO 101」/「AGAIN」

誰の中にもAKIRAはいる・・・御意。

 幼き子供時代の物語。このような物語性ある歌は拓郎には珍しい。子供らの精一杯のドラマを「棕櫚の木」がいつも見守るという設定も胸をうつ。AKIRAのモデルとなるのは、拓郎をいつも守ってくれた歌手志望喧嘩の強い同級生。「天竜しぶき笠」が十八番だったそうだ。姉さんとお風呂に入っていたのは拓郎自身、日に焼けた広いおでこで怖かったのは自分の父、というように自分の実際の幼少時代をベースにしている。
 個人名は日活映画総出演ということで、特に後年のライブ演奏ではYOKOがSAYURIに変わっていた。内藤洋子よりは吉永小百合の方がキャッチーなのか。「来年は小学生」というフレーズから幼稚園が舞台設定だが、リアリティとしては少々無理があるものの微笑ましいエピソードが可愛らしい。
 サウンドは、ボブ・ディラン「My Back Pages」(バーズのカバーの方)を思わせる。過度に感傷的にならずに、テンポよく進んでいく感じがまた快い。
 これをカラオケで歌うと「おちんちん」のところが恥ずかしいが、拓郎はあっけらかんと歌う。「蒼い夏」でも、「おちんちん」が出てくる。「おちんちん」をこんなふうに可愛く爽やかに歌える歌手は少ない。矢沢永吉や小田和正はそもそも歌わないだろうし、谷村新司は、歌ったとしても、なんかとてもイヤらしくなりそうだ。というわけでコレは何かの試金石だ・・試金石?(略)
 NHKの番組収録のために、拓郎ファンにとっては今や聖なる場所である「スタジオ101」に集められた石川鷹彦、エルトン永田、鎌田裕美子、松尾一彦ら大所帯のミュージシャンたち。
 映像で、リハーサル中に、ストリングスの女性が拓郎に間奏についてのお伺いを立てに来る。提案を聞いた拓郎は「そう、じゃ演ってみせて。聴かせて。そういう積極的な人好きよ。でもダメなら却下するからね。」と答え、彼女のストリングスに真剣に聴き入る。拓郎の表情が実にイイ。そして「ok!」。どこがどうなったのかはわからないが、とにかく完成品の間奏のストリングスの美しさは、胸わしづかみで素晴らしい。
 そして単なる微笑ましい少年時代の物語だけではなく、この歌が心に迫るのは後半のたたみかけてくるところだ。

 尊敬するAKIRAともお別れだ  自信はないけど一人でやってみよう

 生きていく事にとまどう時  夢に破れさすらう時

 明日を照らす灯りが欲しい時   信じる事をまた始める時

 AKIRAがついているさ  AKIRAはそこにいるさ

 シュロの木は今も風にゆれている

 ここで単なる一人の子供の話を超えて、私達聴き自身に直接ボールを投げて問いかけてくるかのようだ。私達のそれぞれの人生と重ね合わせ、感動がしみじみと湧き出てくる。「誰の心にもAKIRAはいる」というのがこの作品のキャッチコピーだったがそのとおり。 テレビ映像とCDでは、テイクが違い、メロディーと節回しが微妙に異なる。私としては、CDの方が好みだ。ただの好みだが。この後半の部分のたたみかけ方が、CDの方が切に迫る感じがする。

 ライブでは、99年の「20世紀打ち上げパーティー」ツアーで本編ラストを飾り、翌年の「冷やしたぬき」ツアーでも演奏された。しばらくご無沙汰だったが、2014年のアルバム「AGAIN」でセルフカバーされ、ライブ2015でも演奏された。個人的には原曲が一番好きだが、それよりなにより、こうして生き続けていることがそれ以上に嬉しい。

2015.4/13