uramado-top

愛してるよ

1981年
作詞 松本隆 作曲 吉田拓郎    
アルバム「無人島で」/アルバム「王様達のハイキング」

言葉を走らせロックさせる音楽たち

「愛してるよぉぉぉ」と拓郎がノリノリで熱唱するご機嫌なロックンロール。
 アルバム「無人島で」は、A面の作詞が拓郎、B面の作詞が松本隆という、二人がかつて絡んだ太田裕美のアルバム「背中合わせのランデブー」を連想させる構成となっているが、B面の松本の詞は「ローリング30」ほどは、冴えない。というか、A面の拓郎の詞が秀逸すぎるのかもしれない。
 このアルバムの制作の仕方として、拓郎は、松本隆に「詞のタイトルとアイデア」を指定して詞を書かせていたと語っている。この作品では「愛してるよ」って叫びたい・・という発注をしたのだろうか。それにしても天下の松本隆に、材料・レシピ指定してオーダーするとはスゲーなーと感心したものだ。
 しかし、別の機会の松本隆のインタビューで「拓郎は、最初自分で詞を作ろうとするけど途中で困ってボクのところに依頼がくる。駆け込み寺だ。」と語っていた。もし、二人が同じ状況のことを語っているのだとしたら、面白い。
 その松本隆の作詞だが、~「誰かを悪く言うより友達になりたい」「夢に頬杖つくより 夢を両手で支えたい」「鎖につながれるより空を舞う鳥が好きだよ」・・・シン プルでストレートというか、ヒネリがないというか、あの名作「言葉」を書いた松本隆にしては、なんだか凡庸な詞だ。松田聖子の作詞で忙しかったのか。
 とはいえ、この作品は、そのベタな詞が、拓郎のメロディーと歌唱によって、命を与えられた感が強い。言葉がホップするような清々しい躍動感。そして、「愛してるよぉぉ」の爽快な感情解放。
 その意味で、この作品のベスト・テイクは翌82年の「王様達のハイキング」のライブバージョンだと思う。
 ツアーで歌い込まれたボーカル、あの王様バンドの練り上げられた演奏、ジェイダのねーさんたちの色香とノリのあるコーラスが、この作品を軽やかに、しかしぐいぐいと引っ張ってさらに魅力あるものにしている。
 映像に残るように、楽しそうにギターを弾きながら鉄壁のバンドに身をゆだねている拓郎の笑顔も含めて、絶品だ。
 とにかくこのバンドによって見事な命脈が与えられている様子は、ロバを皆で調教し一流の騎手を乗せてサラブレッド競走馬より速く走らせるかのようだ・・ってそれは失礼だろ
 ある時は、珠玉の言葉に導かれ天から降りてくる音楽、またある時は音楽によって命与えられる言葉。
 とにかく小気味よい音楽のチカラを思う。

2015.4/10